速く強風で大雨になる晩秋の台風
今年は鹿児島など九州地方へ大きな被害をもたらした大型台風が発生しました。過去に発生した大型台風には10月に発生・上陸したものもあります。
ここでは晩秋にやってくる台風の特徴と注意点を紹介します。
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晩秋の台風は珍しくない、10月に上陸した台風たち
2019年10月、千葉県を中心に関東甲信越および全国的に大きな被害をもたらした台風19号と21号は記憶に新しいのではないでしょうか。
10月以降の晩秋に台風が発生・上陸することは決して珍しくありません。2000年以降に発生した台風の上陸時期は次のとおりです。
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
合計 |
|
上陸数 |
1 |
3 |
13 |
21 |
20 |
8 |
66 |
(出展:気象庁|台風の上陸数 (jma.go.jp))
気象庁で公開されている台風に関する統計資料によりますと、2000年以降では、66件中8件、約12%が10月に上陸していました。
月別では、8月>9月>7月>10月>6月>5月 の順で多く上陸していました。
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
合計 |
|
発生数 |
9 |
7 |
6 |
10 |
24 |
41 |
78 |
119 |
103 |
72 |
46 |
21 |
536 |
※台風の接近、上陸の定義
接近…「台風が上陸したかどうかにかかわらず、台風の中心がそれぞれの地域のいずれかの気象官署等から300 km以内に入った場合を「その地域に接近した台風」としています。」
上陸…「台風の中心が北海道、本州、四国、九州の海岸線に達した場合を「日本に上陸した台風」としています。ただし、小さい島や半島を横切って短時間で再び海に出る場合は「通過」としています。」
(引用:気象庁|台風の上陸数 (jma.go.jp))
この中には、大きな被害をもたらした台風も多数ありました。2000年以降、10月に日本へ上陸した台風を以下に抜粋します。
2004年 台風22号 猛スピードで関東を駆け抜けた台風
地下鉄麻布十番駅が水没したこの台風は、秋の台風は風が強い、といわれる象徴的な台風でした。
2004年 台風23号 バスの屋根で一晩を過ごす
「バスが水没し、屋根の上で一晩を過ごした」という映像が記憶にある方もいらっしゃるのではないでしょうか。上記の約2週間後に上陸したこちらの台風は、特に西日本を中心に大きな被害をもたらしました。「平成期最悪の台風の一つ」とも言われています。
2013年 台風26号 伊豆大島に大きな被害
この台風は、伊豆諸島から房総半島に抜けるルートを取りましたが、その際に通過した伊豆大島では土石流が発生し、殆どの被害は伊豆大島で起こった痛ましい台風でした。
2019年 台風19号21号 記憶に新しい、各地に大きな被害をもたらした台風
今年2022年9月に九州地方を直撃した台風14号と同程度の910hPaまで中心気圧が下がった大きな台風でした。多摩川の氾濫に衝撃を受けた方も多いのではないでしょうか。
この台風19号の1ヶ月前、9月9日の台風15号で既に被害を受けていた千葉県では、3度の台風で大きな被害が発生しました。千曲川の氾濫で新幹線の車庫が水没したりと、衝撃的な映像も流れました。
2020年 台風14号 日本に接近、Uターンした10月の台風
中心最低気圧が965hPaとなったこの台風は、本州へ接近しUターンするように南下するなど変わった進路を辿った台風です。日本列島へ上陸こそしませんでしたが、伊豆諸島で大雨特別警報が発表されたり東海地方で土砂災害が発生するなど記録的な大雨となりました。
【10月5日】2020年 台風14号
番外編:観測史上最も遅く上陸した11月30日の台風
なんとまもなく12月という11月30日にも台風が上陸していました。今から約30年前、1990年の出来事です。和歌山県に上陸し、そのまま北上するコースでした。すぐに温帯低気圧に変わりましたが、まったく油断なりません。まだこれから台風が来るかもしれないのです。
秋の台風は速い=強風の被害
「秋の台風は速い」と言われています。速い台風は強風の被害をもたらします。その象徴的な台風が2004年に伊豆半島へ上陸した台風22号です。
なぜこんな事が起こるのか、それは偏西風の影響です。偏西風は西から東へ、日本でいえばユーラシア大陸から太平洋への向きで上空を恒常的に吹く風となります。
夏の間は日本付近を覆っている太平洋高気圧に押されて、偏西風の軸が北上し、秋になるとこの偏西風の軸が南下します。
たとえば飛行機は西へ行く便では遅く(時間がかかる)、東へ行く便では早い(時間が短い)ダイヤになりますが、これも偏西風の影響で、風に乗る東行きの便が早く到着するわけです。
すると、飛行機と同じ理屈で、秋の台風も南下した偏西風に乗って速くなり、風も強まるのです。その結果、被害も大きくなりやすいのです。
秋雨前線があると強風+大雨の台風にも
すっきりした晴れをイメージする秋ですが、実は秋雨前線の影響で雨が多くなります。
秋雨前線は、夏の暖かな太平洋高気圧が南下し、北から南へ来る冷たい高気圧の境目に出来る前線です。ここに南から湿った空気を持った台風が来ると、活発な雨を降らせます。もともと速い風を吹かせる台風が、活発な雨も降らせる台風になるのです。
日本から遠く離れた台風の影響も受ける
10月の終わりになると、晩秋でも発生する可能性がある台風の多くはフィリピン付近から南シナ海付近に向かい、消滅します。
当社スタッフの経験則ですが、10月下旬で台風が発生したタイミングで沖縄に居た際、台風は遠く離れたフィリピン付近を通過しているので影響はない、と思いきや、意外にも海が荒れていて、最も南の八重山では船が欠航する、なんてこともありました。
海況によっては、大型船でも台風を避けるために迂回したり避難したりするため、到着が遅れる場合もあります。フィリピンだけでなくマレーシア、タイ、ベトナムなど東南アジアや、中国南部、広州や深センがある広東省付近からの船便に影響が出る恐れもあります。
台風は備えられる自然災害
晩秋にも台風への備えが必要だと感じていただけたのではないでしょうか。
台風は、自然災害が多い日本において事前に覚知、備えやすい事象です。台風、大雨、強風などの情報を正しく理解し取得することで、被害を少なく抑えることができます。
台風に関する用語や数値の読み解き方、企業における7つの台風対策についての以下記事もぜひご覧ください。
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