【3分以内が肝心】オフィスでも使える火災時の初期消火の方法
こんにちは。レスキューナウです。
毎年3万件以上も発生する火災。あなたも一度は現場に出くわしたり、消防車が出動するのを見かけたことがあるのではないでしょうか。
火災が発生したときは、「いかに早く気づき、初期の段階で消火を行うか」が重大な被害を生まないためにとても大切です。
これからの季節は空気が乾燥し、火災が起きやすいシーズンを迎えます。
火災は人命に危険を及ぼし、大切な資産に大きな損害を与えます。
今回はこうした事態を防ぐための初期消火の重要性や具体的な方法について解説します。
この記事の目次[非表示]
- 1.オフィス火災の原因と防火
- 2.初期消火の重要性とタイミング
- 3.初期消火に有効な消火器の使い方
- 3.1.消火器の種類と選び方
- 4.初期消火の際の3つのステップ
- 4.1. 火災の発生を周囲に知らせる
- 4.1.1.消防署への通報の仕方
- 4.2.初期消火を行う
- 4.3.その場から逃げる
- 5.初期消火における注意点
- 6.防災訓練できていますか?
オフィス火災の原因と防火
オフィス火災の多くは、機器のトラブルやちょっとした不注意が引き金となって発生することが一般的です。
PCやコピー機等の電気機器の老朽化や配線の損傷はショートや過負荷を引き起こし、延長コードや電源タップへのタコ足配線なども電気系統に負荷がかかるため、発火のリスクが高まります。
また、たばこの不始末や段ボールやコピー用紙等の紙製品の積みすぎも、火が急速に燃え広がる可能性を高めます。
その他、厨房設備があるオフィスではガス漏れやホコリが火災の原因となることも少なくありません。
改めて自社のオフィスに火災の原因となるものや環境がないかを確認し、定期的な点検や交換、火の管理を十分に行って、まずは防火に努めましょう。
【オフィス火災の原因例】
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初期消火の重要性とタイミング
初期消火とは、火災発生直後の最初の数分以内に行われる消火活動のことです。
目的は鎮火ではなく、限られた時間内に適切な消火活動を行うことによって、消防車が現場に到着するまでの被害を最小限にとどめることにあります。
初期消火はタイミングが非常に重要であり、一般的には火災発生後3分以内に初期消火ができないと壁や天井に火が燃え広がり、市民や自衛消防隊による消火が難しくなると言われています。
消防庁による令和5年の調査では、消防隊の現場到着所要時間は全国平均で約10.3分とされており、発生直後の火災には間に合いません。
火災発生から5~10分で火元の室内温度は500℃程度にまで達し、一瞬で皮膚や呼吸器系に大やけどを負ってしまいます。
煙やガスも充満し、あっという間に一酸化炭素中毒で意識を失うかもしれません。
仮に防煙マスクをしていても、濃密な煙に巻かれてしまうと方向はおろか自分がどんな姿勢でいるのかも分からない空間識失調に陥り、避難もできなくなります。
映画やアニメのキャラクターのように水をかぶって屋内に進入し、人命救助をすることは素人では不可能です。
そうなる前にまずは徹底的な防火が重要になりますが、それでも火災が発生してしまった場合は、火が小さいうちにすぐに初期消火を行うことで被害を抑え、消火の成功率を格段に向上させられます。
初期消火に有効な消火器の使い方
初期消火の方法は火災の種類や状況に応じて変わりますが、最も手軽で有効な手段は消火器を使用する方法です。
しかし、いざという時に消火器を迷わずに使用するためには、事前に設置場所や使い方をしっかりと確認しておく必要があります。
【消火器の基本的な使い方】
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実際に消火器を使用する際は、火元から適切な距離(通常3~5メートル程度)を保った状態で、火に巻き込まれたり煙を吸わないように注意します。
また、消火器で火を消すことが出来た後も再燃の可能性が残っているため、しばらく火元を観察して安全確認を怠らないようにしましょう。
消火器の種類と選び方
消火器にはさまざまな種類があり、それぞれ適した用途があります。
一般的な消火器は粉末消火器、二酸化炭素消火器、水系消火器の3種類で、適切な消火器を選ぶためにはオフィスの環境や使用場所の特性を考慮することが重要です。
【一般的な消火器の種類と特徴】
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初期消火の際の3つのステップ
ここからは初期消火の方法を3つのステップに分けて解説します。
火災の発生を周囲に知らせる
まず、火事が発生した際は「火事だー!」と大声で周囲に状況を知らせ、協力してくれる人を集めましょう。
その際、火災報知器のスイッチを押す、ホイッスルを鳴らす、音の出るものを叩くなど、肉声よりも広い範囲に音が伝わる手段をとるのも有効です。
また、人間には心の安定性を保とうとする「正常性バイアス」と集団と異なる行動をとりにくくなる「同調性バイアス」いう機能が備わっており、災害時にはそれがマイナスに働くことがあります。
例えば、危険が迫っていてもそれを正しく認識できなかったり、「周りの人が逃げていないから大丈夫」という考えから逃げ遅れてしまったりする状態です。
緊急時には、この「正常性バイアス」や「同調性バイアス」が働くということを知っているだけでも、非常ベルが鳴ったらとりあえず避難行動をとるといったことが出来るようになり、生存確率を飛躍的に高めてくれます。
火災が起きたとき、大きな声を出すことや誰かに協力してもらうという他者と違う行動をとることが恥ずかしい方もいらっしゃるかもしれませんが、ぜひ一歩踏み出す勇気を持ってみてください。
消防署への通報の仕方
火災が発生後、協力してくれる人を集めるときは、集まった人に対して必ず手を差し向けるなどして
- 「〇〇さんは119番通報お願いします!」
- 「△△課長は防災センターに連絡してください!」
- 「帽子をかぶったあなたは消火器を集めてください!」
といった具体に相手をしっかり指定して対象者に対応を依頼します。
「誰か119番してください!」だと誰かがやるだろうという意識が働き、結果的に誰も通報していなかったというケースもあると言われています。
もし、あなた一人しかその場にいない場合は、初期消火の前に通報することが大切です。
初期消火を失敗してから通報してしまうと、火災が大きくなってから消防を呼ぶことになり、被害が拡大してしまいます。
とにかくまずはプロを呼び、それから初期消火をしましょう。
以下は消防署に通報する際の会話の例です。
消防署 |
通報者 |
---|---|
119番消防です。火事ですか、救急ですか? → |
→ 火事です |
消防車が向かう住所を教えてください → |
→ ○○区○丁目○番○号 |
いま消防車が向かっています。 |
→ はい、自分は安全な場所にいます。 |
何が燃えていますか? → |
→ ノートパソコンから出火して周りのデスクの書類も燃えています。 |
逃げ遅れた人やけが人はいますか? → |
→ いえ、いません。 |
初期消火はしていますか? → |
→ 消火器を使っています。火は小さくなったように見えます。 |
あなたのお名前と電話番号を教えてください → |
→ 株式会社〇〇の総務課長の〇〇 △△です。電話番号は〇〇です。 |
分かりました。火や煙で危険を感じたらすぐ避難してください → |
→ 分かりました |
地上で消防車の誘導をお願いします → |
→ 分かりました |
初期消火を行う
周囲への注意喚起と同時に、可能ならば初期消火を試みます。
消火器などの適切な装備を使って火を抑えることが求められます。
炎を消す
消火器のほか、身の回りにあるありとあらゆるものを使って素早く初期消火を行います。
【初期消火に使えるもの】
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ただし、しばらく初期消火をしても消化できない場合や天井に延焼してしまったときは、命を最優先に初期消火を中止して避難に移行します。
排煙する
窓際に排煙窓が備え付けられている場合もあるので、起動ボタンを押して窓を開放しましょう。
ブラインドなどが掛かっている場合は極力上げるか、引きちぎります。
また、可能であれば防火シャッターや防火扉も起動させます。
これらは自動で作動するものもありますが、閉まる方向に障害物が置いてあると炎や煙を防げません。
消防法でも規定されている通り、普段からシャッターが下りてくるラインにはものを置かないように十分配慮しましょう。
その場から逃げる
上記の手順を実施しても初期消火が難しいと判断した場合は、すぐにその場から逃げてください。
火災の危険は炎だけではありません。
火災の死亡原因で大きな割合を占める一酸化炭素中毒ですが、一酸化炭素は無色無臭で目には見えません。
自分の知らないうちに吸ってしまい、体が動かなくなってしまいます。
火が出る前のくすぶっている段階で一酸化炭素が多量に出ていることがあるので、火がそこまで燃え広がっていないからといって油断は禁物です。
他にも、避難の際に煙に巻かれて目の前が全く見えなくなり、身動きがとれなくなることが多々ありますので、姿勢を低くしてハンカチなどを口にあてて避難しましょう。
初期消火における注意点
初期消火を行う際は、まず自分の安全を確保することが最優先です。
火が予想以上に燃え広がることを想定して、事前にオフィスのどこに避難口があるのか、避難経路はどうなっているのかなどを確認し、常に背後や側面に安全な避難経路を確保しておきましょう。
万が一火災が発生した際は、フロアが煙で充満し、30cm先が見えない状況になることもありえます。
火災に伴い停電になることもあるので、そのときはしゃがみながら暗い中を避難しなければなりません。
事前に避難経路や避難口を把握しておくことがいかに大切かご理解いただけるかと思います。
また、火災の種類に対して誤った消火器を使用してしまうと、危険度が高まる可能性も考慮する必要があります。
例えば、電気火災に水をかけると感電の危険、油火災に水をかけると火が燃え上がる危険があるため、粉末消火器や二酸化炭素消火器の使用が適切です。
初期消火という言葉からどうしても火を消すことに意識が向きがちですが、注意点を踏まえてなるべく複数人で協力しながら安全に消火活動を行いましょう。
防災訓練できていますか?
この記事では初期消火の重要性や具体的な方法、注意すべきポイントについて解説してきました。
しかし、初期消火も事前にやったことがないと、いざという時にはスムーズに動けないものです。
対応が遅れると火災が急激に広がる恐れがあるため、日頃から訓練を行い、消火器の使い方や正しい初期消火の方法を身につけておきましょう。
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防災訓練の実施は法令で義務付けられていますが、今回の初期消火以外にも災害や危機に備えた防災訓練は多岐にわたります。
レスキューナウでは全従業員向けの防災訓練だけでなく、自衛消防隊、災害対策本部、役員など、それぞれの役割に応じたさまざまな訓練メニューをご用意しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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