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熊本地震を振り返る ~災害時の避難の妨げになる正常性バイアスと同調性バイアス~

■この記事の情報は、2024年4月15日現在の情報です。

この記事の目次[非表示]

  1. 1.熊本地震の概要
  2. 2.正常性バイアスと同調性バイアスとは
  3. 3.正常性バイアスの恐ろしさ
  4. 4.今後の考え方の指標として


こんにちは。レスキューナウです。

2016年4月14日21:26頃に起きた熊本地震の前震から、今年で8年が経過しました。

1949年以降の観測史上初とされる、「同一地域で28時間以内に震度7の地震が2度発生した」かつ「震度6弱以上の地震が7回発生した」ということもあり、今なお記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。

今回はその熊本地震の際にも多く話題に上がった、「正常性バイアス」と「同調性バイアス」について詳しくお伝えします。


熊本地震の概要


2016年4月14日21:26頃、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード6.5、最大震度7の地震が発生しました。
翌日15日の15:00までに、死者9人(益城町7、熊本市2)、負傷者1022人以上の被害者が挙げられています。家屋については19棟が一部損壊とされていましたが、この時点で多数の家屋が損壊しており、被害状況の把握が翌日以降に行われる予定でした。また、熊本市とその周辺、及び大分県の一部で断水が相次ぎ、熊本市や益城町などで停電も発生しました。


4月16日の01:25頃、実質的には前震の翌晩に、再び熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.3、最大震度7の地震が発生しました。この地震が熊本地震の本震でした。


熊本地震本震の震度分布図(気象庁サイトhttps://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/2016_04_14_kumamoto/index.htmlより引用)



2019年4月12日の時点で更新された総務省消防庁によると、死者273人、負傷者2809人(ただしこれは前震も含めた数)を数え、住家の被害も全壊8667棟、半壊34719棟、一部損壊163500棟に上っています。
ライフラインも、熊本県内だけで約19万軒が停電が発生、熊本市内全域で断水しています。鉄道や高速道路も広範囲で見合わせや通行止めが行われ、前日は機材や乗員の手配で一部の便が欠航したにとどまった熊本空港も、ターミナルビルの天井が崩落し、全便欠航となりました。

本震を受けて、熊本市の熊本城では、重要文化財建造物13棟全てが倒壊などの被害を受けました。復元された建物の天守閣も瓦が落ち、また石垣も広い範囲で崩壊しました。

熊本市の南隣に位置する宇土市では、市役所庁舎の4階部分が潰れ、倒壊寸前となりました。中に人が立ち入る事ができず、中にあった重要な書類は、後日磁石を付けたクレーンで書類棚を引き出す事態になりました。

南阿蘇村では、山の斜面が大規模に崩壊し、付近を走る豊肥本線や国道57号線といった主要な交通網である線路や道路も崩壊しました。

また、国道325号線では、山の崩壊に伴って阿蘇大橋が落橋し、車で付近を走行していた方が巻き込まれ亡くなるなど、痛ましい事故も発生しました。


正常性バイアスと同調性バイアスとは


主にビジネス、そして心理学で使用される「バイアス」という言葉は、「偏り」や「傾向」、「先入観」という意味を持っています。

正常性バイアスとは、都合の悪いことを目の当たりにしても、「これくらいなら大丈夫」「こんなことはありえない」と思い込もうとする心の働きです。
平常時には、日常の様々な出来事や判断が(自分から見た)"正しい範囲に収まっている"と認識する、心の平穏を守るための機能ですが、災害発生時の非常時に機能すると、危険を正しく認識ができず避難行動の遅れにつながったり、被害の拡大につながったりという恐れがあります。

例えば、こういったシーンが想定されます。

・火災報知器が鳴ったときにどうせ誤報だ、と思うケース

・緊急地震速報が出ても退避行動をせず、そのままスマホ画面を見ているケース

・特別警報が出そうな悪天候の日にも時差出勤や在宅勤務等を推奨せず、従業員に出社させるケース

一方、同調性バイアスとは、集団の中にいる際に、つい他者と同じ行動をとってしまう心の働きです。平常時に働くと、集団の中で人間関係を良好に築きやすくなりますが、災害発生時の非常時に機能すると、「周りが誰も気にしていないからきっと大したことはないな」「誰も避難していないから自分もできないな」と考えてしまい、こちらも避難行動の遅れや被害の拡大につながる恐れがあります。

さて、ここでブログをお読みの皆さんに質問です。

先日の朝9:30頃に関東・そして宮崎で発生した震度5弱の地震の際、緊急地震速報が鳴りましたが、すぐに机の下に潜る、頭を守る、といった行動はとれましたか?

「どうせそこまで大きな地震にはならないだろう」
「皆は普通に仕事を続けていたし、自分だけそんな行動はとれない」

こういった考えから、おそらく行動しなかった・できなかった方も多いはずです。
その考えがどういった結果を引き起こすか、熊本地震を中心に改めて振り返りましょう。


正常性バイアスの恐ろしさ


繰り返しになりますが、

「観測史上初とされる、同一地域で28時間以内に震度7の地震が2度発生した」
「九州での大地震は珍しかったため、備えが万全ではないことも多かった」

ということが熊本地震の特徴です。

言い換えると、震度7の地震の後、それより大きな地震が起こったことは今まで(※)なかった、かつ、それに対する備えも十分とは言えなかった、ということになります。※1949年の観測開始以降

実際、前震とされる4/14に被災し避難していても、翌朝4/15には自宅へと戻り、就寝中に本震にあわれた方が多々居たとされています。

ここには少なからず、正常性バイアスが働いていたのでは、という見方があります。

「震度7の地震はあったけれど、これ以降は"余震"だから大きくても震度6くらいだろう」
「落ち着かない避難所より、住み慣れた家で過ごした方が休めるだろう」
「熊本は地震は多くないはずだからすぐ落ち着くだろう」

大災害で疲弊した心の働きとしては十分に起こりえることだと思います。
上記が組み合わさった結果として、これだけの被害に繋がってしまった可能性があります。


今後の考え方の指標として


今回の記事では、熊本地震を振り返りつつ、「正常性バイアス」そして「同調性バイアス」について取り上げました。


地震がない安全な場所など日本には存在せず、想定で発生確率が低いとされている地域でも油断は禁物です。

2024年、各地で地震が頻発し、いつ自分のいる/事業所のある地域が被災地となるかわからない今、日々の備えをするとともに、被災してしまった場合どうするべきか、どうするかをあらかじめ考えておくことが重要です。


対策や備えが必要なことはわかっていても、何から手を付けていいかわからない……
被災した場合どうするべきか、避難訓練等をしていても定着していない……

そんなお悩みをお持ちのご担当者様、一度レスキューナウの防災・BCP課題窓口へご相談ください!


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(参考文献)
「平成28年熊本地震による人的被害の特徴」牛山素行・横幕早季・杉村晃一 自然災害科学 35 -3 203~215(2016年)
「熊本県熊本地方を震源とする地震(第121報)」総務省消防庁(2019年)
「怖い、怖い、怖い…」あの夜、私はデスクと抱き合い絶叫した」 NHK熊本 クマガジン(2023年) https://www.nhk.or.jp/kumamoto/lreport/article/001/16/

 株式会社レスキューナウ
レスキューナウは設立から20年以上「危機管理×情報技術」に取り組んできた、
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