
富士山が噴火したらどんな影響がある?|歴史から見る被害の範囲やリスク
こんにちは。レスキューナウです。
世界に占める国土面積はわずか0.25%と、日本はごく小さな島国ですが、国内には111の活火山があり、これは世界の活火山の約1割を占める数です。
そんな世界有数の火山国である日本の中で、もっとも有名な活火山と言えば、皆さんもご存じの富士山。
近年では2021年12月3日に山梨県東部富士五湖を震源とした最大震度5弱の地震が発生し、一瞬ヒヤッとした人もいるのではないでしょうか。
幸いにもこの地震と火山活動との直接的な関連性は確認されませんでしたが、もし富士山が噴火した場合、首都圏をはじめ日本全国に大きな影響が出る可能性があると言われています。
そこで今回は、富士山噴火による影響とその被害範囲やリスクについて、企業が受ける被害を中心に紹介します。
この記事の目次[非表示]
- 1.最後に富士山が噴火したのはいつ?
- 2.富士山が噴火する可能性は?
- 3.富士山が噴火した場合に発生することと想定リスク
- 3.1.噴石の影響と到達範囲
- 3.2.溶岩流の影響と到達範囲
- 3.3.火山灰の影響と到達範囲
- 3.4.火砕流の影響と到達範囲
- 3.5.泥流の影響と到達範囲
- 3.6.空芯の影響と到達範囲
- 3.7.火山ガスの影響と到達範囲
- 4.最新の富士山ハザードマップによる被害範囲の想定
- 5.富士山噴火が企業への影響とリスク
- 5.1.出社不可による業務停止
- 5.2.ライフラインの停止による業務停止
- 5.3.物流の寸断による事業継続困難
- 5.4.長期的な影響と対応の遅れ
- 6.火山噴火への備え:BCP策定と防災備蓄の重要性
- 7.最後に
最後に富士山が噴火したのはいつ?
2024年時点で最後に富士山が噴火したのは、今から300年以上前の1707年。
宝永大噴火と呼ばれるこの噴火は江戸時代、日本国内でも最大級の地震である宝永地震(1707年10月28日)の49日後に始まりました。
この噴火では火山灰が広範囲に降り注ぎ、川崎や江戸(現在の東京)にも影響を及ぼしたとされています。
宝永大噴火以降、富士山で大規模な噴火は起きていませんが、江戸時代から昭和にかけて、火口からガスや水蒸気が放出される「噴気活動」が観測されるなど、火山活動が完全に停止したわけではありません。
富士山は過去約5600年の間に約180回噴火しており、平均すると約30年に1回の頻度で噴火している計算になります。
現在、富士山は活火山に分類されており、火山活動の監視が継続的に行われています。
噴火の可能性が完全に否定されるわけではないため、防災情報への注意や適切な備えが重要です。
富士山が噴火する可能性は?
宝永大噴火以降、現在までの直近300年は富士山は噴火することなく平穏な状態を保っていますが、噴火の可能性を完全に否定することはできません。
過去の噴火ではマグマの動きに伴う火山性地震や火山性微動などの前兆現象が観測されてきましたが、これらの兆候が必ずしも噴火につながらないケース、逆に短時間で噴火に至る場合もあり、実のところ予測は難しいとされています。
しかし、前述の通り平均すると約30年に1回の頻度で噴火していることなどを踏まえると、明日にでも噴火してもおかしくないとも考えられます。
南海トラフ地震と連動した噴火の可能性も指摘されるなど、富士山は依然として噴火の恐れがある活火山であるということを忘れずに、引き続き監視を続け、最新の情報を注視しておくことが求められます。
富士山が噴火した場合に発生することと想定リスク
富士山が噴火した際には、噴石や溶岩流、火山灰など、さまざまな現象が発生し、それぞれが異なる形で広範囲に影響を及ぼすと考えられます。
噴石は噴火口周辺に大きな被害をもたらし、溶岩流は地形やインフラを変貌させる危険があります。
また、火山灰は遠方まで広がり、生活や経済活動に深刻な支障をきたすでしょう。
この章では、噴石、溶岩流、火山灰について、それぞれの到達範囲と影響を具体的に探り、噴火によるリスクを考察します。
噴石の影響と到達範囲
噴石(火山弾)とは、噴火時に火口から高速度で吹き飛ばされる岩石のことで、その被害範囲は火口から約2km〜4km先とされています。
この範囲では飛散のスピードが速く、避難までの時間的余裕が少ないため、特に生命に対する危険性が高いとされています。
富士山の火口から半径4km圏内には、山梨県側では富士吉田市や富士河口湖町の一部、静岡県側では富士宮市や裾野市などが含まれ、これらの地域では噴石が住宅や建物を直撃する危険性があるだけでなく、登山者や観光客が避難する時間的余裕が極めて限られることが懸念されます。
そのため、噴石の影響が予測される地域では事前の防災計画や迅速な避難体制の構築が重要です。
また、噴火時にこれらの地域にいる場合には、速やかに山から離れることが推奨されます。
溶岩流の影響と到達範囲
溶岩流とは、火口から噴出した高温のマグマが地表を流れ下る現象で、その温度は1000度を超えることがあります。
流下速度は比較的遅く、一般的には時速数km程度であるため、徒歩で避難できる場合も多いとされています。
しかし、その進行方向に建物やインフラがある場合、焼失や破壊の被害を受ける可能性が高く、特に火山周辺地域では大きな影響が予測されます。
富士山周辺では山梨県富士吉田市や忍野村、静岡県富士宮市や御殿場市の一部が溶岩流の到達範囲に含まれ、これらの地域では地形により溶岩流が谷筋や低地に沿って流下し、集落や主要道路を直撃する恐れがあるため、避難経路の確保が重要です。
また、溶岩流は火山ガスや火山灰とともに環境への長期的な影響も及ぼします。
土地が溶岩で覆われると、農地や森林が失われるほか、河川や湖が塞がれることで水害のリスクが高まる場合もあるため、火山周辺では事前の監視体制や避難計画を整備することが不可欠です。
火山灰の影響と到達範囲
火山灰は、噴火によって火口から噴出される直径2mm未満の細かな粒子状の噴石で、これらは風によって運ばれ、火口から数十kmから数百km離れた地域にも降り積もる可能性があります。
特に強風に乗ることで広範囲に拡散し、関東地方を含む日本の広域で、火山灰が降り積もることによるインフラの停止などが懸念されています。
例えば、空港の滑走路閉鎖や航空機の運航停止、道路では視界不良やタイヤのスリップ事故が増加することが予測され、火山灰が変電所の送電線に付着することにより、停電が発生するリスクも高まります。
また、火山灰が数週間にわたって降り続いた場合、物流の停滞や工場の操業停止など、製造業やサービス業を含む多くの業種が被害を受け、企業活動にも支障をきたすことが考えられます。
その他にも農業や生活環境への長期的な影響も懸念されるため、事前に火山灰の影響範囲をシミュレーションし、早期避難や設備保護のための対策を講じることが重要です。
加えて、降灰が予測される地域では、マスクやゴーグルの着用、家屋への灰の侵入を防ぐための準備をしておきましょう。
【火山灰による影響の例(中央防災会)】
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火砕流の影響と到達範囲
火砕流は、噴火によって発生する数百度に達する高温の溶岩片や火山灰、火山ガスが混ざり合い、火山の斜面を高速で流れ下る現象です。
流下速度は時速数十kmから場合によっては数百kmに達し、地形によっては火口から10km以上離れた地域まで到達することもあるため、居住地や主要道路、観光施設が壊滅的な被害を受ける恐れがあります。
進行方向にあるものを飲み込みながら広範囲にわたって壊滅的な被害をもたらすため、避難は極めて困難です。
火砕流は主に富士山の火口から近い範囲、特に山梨県側の富士吉田市や静岡県側の富士宮市といった山麓地域に影響を及ぼす可能性が高いとされており、その後に堆積した火山物質が長期間にわたって地形や環境に影響を及ぼします。
こういったリスクを軽減するためには、火砕流の予測範囲や地形特性を基にした避難計画を策定しておくことや、監視体制を強化し、噴火の兆候を早期に把握することが求められます。
泥流の影響と到達範囲
泥流は、噴火に伴って発生する大量の泥水と火山物質が混ざり合い、斜面を高速で流れ下る現象で、その速度は時速数十kmにも達するため、広範囲に深刻な被害をもたらす可能性があります。
影響範囲は地形によって大きく左右され、富士山周辺では山梨県側の河口湖周辺や静岡県側の富士宮市近辺など、谷筋や河川沿いの地域が特に危険とされています。
これらの地域では泥流が川の流路を埋め尽くし、橋や堤防が破壊される恐れがあるほか、住宅地や農地が埋没する可能性もあり、場合によっては火口から離れた遠方の地域にも被害が及ぶ可能性があります。
泥流の発生は突然であり、その進行速度から避難が困難な場合も多いため、危険地域では事前に警戒区域や避難ルートを明確にし、適切な防災対策を講じることが重要です。
また、火山周辺では降雨や噴火後の状況に特に注意し、警報や気象情報を確認しながら迅速に対応する必要があります。
空芯の影響と到達範囲
空芯とは、噴火によって発生する空気中を伝わる強力な衝撃波のことで、火口周辺で発生した高圧の空気が急速に広がることで生じ、爆発的なエネルギーが周囲に伝播します。
空芯の影響範囲は火口から数km以内が中心ですが、条件によってはさらに遠方まで到達する場合もあります。
火山周辺の居住地や観光施設では、衝撃波によって窓ガラスが割れる、建物の外壁が損傷するなどの被害が想定され、飛散物の衝撃を伴う場合、家屋や車両への直接的な損害も発生する可能性があります。
衝撃波のエネルギーが強い場合には、人々が吹き飛ばされることや爆音が数十km離れた地域で聞こえることもあります。
空芯による被害を軽減するためには、火山周辺の建物の耐震性を高めることや、爆発的噴火が予測される場合の避難計画を整備することが重要です。
また、噴火警戒レベルが引き上げられた場合には、火口から一定距離を保つなどの防災措置が求められます。
火山ガスの影響と到達範囲
火山ガスとは、噴火によってマグマに溶け込んでいた二酸化炭素、二酸化硫黄、硫化水素などの有害な気体が、火口や噴火口周辺から大量に放出される現象です。
このガスは風に乗って広がり、火口周辺だけでなく遠方の地域にまで到達することがあるうえ、低地や谷筋にたまりやすく、高濃度のガスが集まると、呼吸困難や中毒症状を引き起こす危険があります。
富士山周辺では、山梨県の富士河口湖町や静岡県の富士宮市など、火口近くの地域が特に影響を受ける可能性があり、人命に直接的な影響を及ぼすだけでなく、周辺の動植物にも深刻な被害が及ぶことが懸念されます。
さらに、マグマに溶け込んだ二酸化硫黄が大気中の水分と反応すると酸性雨の原因となり、農作物や水源への影響が拡大する可能性もあります。
こうした被害を最小限に抑えるためには、火山活動の監視体制を強化し、ガスの放出量や濃度を継続的に測定することが重要です。
また、火口付近の危険区域を設定し、風向きやガス濃度に応じて適切な避難指示を迅速に行う必要があります。
最新の富士山ハザードマップによる被害範囲の想定
2021年3月、富士山火山防災対策協議会は富士山噴火のハザードマップを17年ぶりに改訂し、溶岩の噴出量予測を2倍に引き上げるなど、噴火規模の拡大が想定されました。
最新のハザードマップによると、溶岩流は神奈川県相模原市付近まで到達する可能性があります。
また、中央自動車道も被災想定地域に含まれるため、物流に大きな影響が出ると予想されます。
風の影響によっては、富士山噴火から1~2時間で首都圏や都内にも火山灰が降り、数cm以上積もる可能性も懸念されています。
1~2時間で安全を確保するのは非常に困難なため、あらかじめ富士山が噴火した場合の対応について検討しておくべきと言えるでしょう。
富士山噴火が企業への影響とリスク
富士山が噴火した場合、火山灰や噴石、火山ガスなどの影響により、企業活動に多大な支障をきたす可能性があります。
特に交通網やライフラインへの影響が顕著であり、火山付近に事業所をお持たない企業であっても、これらがもたらすリスクについてしっかりと把握しておくことが求められます。
出社不可による業務停止
火山灰の降灰や道路の通行止め、鉄道やバスの運行停止により、従業員がオフィスに出社できなくなる事態が想定されます。
また、オフィスビル自体が火山灰の堆積や停電、水道の停止などにより使用不可能になるケースも考えられます。
このような状況では、在宅勤務の環境が整っていない企業では業務継続が困難になります。
ライフラインの停止による業務停止
自宅近辺で電気、水道、ガスなどのライフラインが止まると、従業員が自宅から業務を行うことすら不可能になります。
通信インフラが影響を受ける場合には、リモートワークの実施も難しくなり、企業の機能が完全に停止するリスクがあります。
物流の寸断による事業継続困難
火山灰が広範囲に降ることで、主要道路や空港が閉鎖され、陸路・空路を使ったヒトやモノの移動が難しくなります。
これにより、物流が途絶し、製造業や小売業では製品や原材料の供給不足が発生します。
特に富士山周辺には製薬、製紙、飲料メーカーなどの工場が多く存在し、これらの操業停止が全国的な物資の供給不足に繋がる可能性があります。
長期的な影響と対応の遅れ
噴火の影響が数週間から数カ月にわたる場合、企業の復旧計画が遅れ、顧客や取引先に多大な影響を及ぼします。
また、噴火後の土地の回復や物流網の再整備には時間を要するため、長期的な事業縮小や取引停止のリスクもあります。
火山噴火への備え:BCP策定と防災備蓄の重要性
富士山噴火などの火山災害に備えるためには、事業継続計画(BCP)の策定と防災備蓄が重要です。
噴火時には火山灰や噴石、物流の途絶などが事業の広範囲に影響を及ぼすことが考えられるため、何よりも事前準備が被害を最小限に抑える鍵となります。
BCP策定の際には、オフィスや工場が使用できなくなった場合の代替拠点の確保や、従業員がリモートワークを行えるIT環境の整備が求められほか、緊急連絡網の整備や物流の寸断に備えたサプライチェーンの分散化も欠かせません。
一方、防災備蓄については、火山灰から身を守るための防護メガネやマスク、フード付きジャンパーやヘルメットなどを備えておくことをおすすめします。
また、降灰が機械や空調設備に入り込むと故障の原因となるため、ブルーシートや養生用シートも備えておくと安心です。
加えて、火山灰は溶けないため、そのまま放置しておくと排水路を詰まらせて水害を引き起こす可能性もあります。
スコップや箒、土のう袋を用意し、速やかに除去作業ができるようにしましょう。
その他、水や食料、簡易トイレ、携帯充電器、ラジオなどの基本的な災害用備蓄品の準備も忘れてはいけません。
自然災害への備えは早めの準備が肝心です。
BCPと防災備蓄を整え、予期せぬ事態にも柔軟に対応できる体制を構築しましょう。
最後に
噴火は地震同様、いつ発生するかが読めない災害です。
明日起こるかもしれないからこそ、後回しにせずに「今」対策することが非常に重要であり、その事前準備こそが会社を守る盾となります。
もし、どのような事前準備を行い、どんな備蓄品を選べばよいのかわからないというお悩みをお持ちの方は、レスキューナウへお気軽にお問い合わせください。
また、噴火の情報をいち早くアラートメールで受信したい方には、災害情報収集ツールの「レスキューWeb」やオールインワン危機管理ツール「imatome」もおすすめです。