2023年4月から送迎バスの置き去り防止安全装置の設置が義務化! ガイドライン・補助金・対象製品・設置方法を解説
2023年4月1日より、幼児等の所在確認と送迎用バス等への安全装置の装備が義務化されました。この記事では、内閣府および国土交通省ガイドラインに沿って、義務化の概要、改正内容、補助金、確認・設置対象、対象製品、設置方法などについて解説します。
この記事の目次[非表示]
幼児等の所在確認と送迎用バス等への安全装置の装備の義務化の概要
義務化開始日 |
2023年4月1日から(1年間の経過措置あり) |
義務付け内容 |
①バス降車時の子供の所在確認(点呼など)
②バスへの安全装置の装備
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子どもの所在確認の対象 |
・全国の幼稚園、認定こども園、保育所、特別支援学校など ・全国の認可外保育施設、障害児通所支援、小学校、放課後児童クラブ、保育所以外の児童福祉施設、居宅訪問型保育事業など |
安全装置の設置対象 |
全国の幼稚園・認定こども園・保育所・特別支援学校などの送迎バス、計約44,000台 |
違反した場合の罰則 |
業務停止命令の対象 |
補助金額 |
安全装置の購入および設置費用として、1台あたり17万5千円(別途、市区町村より補助金あり) |
補助金対象製品 |
安全装置の使用に関するガイドラインに適合する製品 ※次の2方式のどちらか、または両方を満たしている(併用式)こと ・降車確認式 ・自動検知式 |
義務付け内容を補う対策 |
職員向けの安全管理マニュアルの作成 ・毎日使えるチェックシート ・ヒヤリハット事例の共有、こども自らSOSを出せる支援 ・バスのラッピングやスモークガラスの使用に関する留意事項 など |
所在確認と安全装置の装備の義務化とは?
近年相次いだ送迎バス車内の置き去りという悲しい事故を防ぐため内閣府等により緊急対策会議が行われ、「こどものバス送迎・安全徹底プラン」によって幼児等の送迎バスにおける所在確認や安全装置の装備が義務化されました。
この「こどものバス送迎・安全徹底プラン」の緊急対策は大きく4つで構成されています。
- 所在確認や安全装置の装備の義務付け
誰が運転・乗車するかにかかわらず、バスの乗車・降車時に、幼児等の所在の確認が確実に行われるようにするため、府省令等の改正により、幼児等の所在確認と安全装置の装備を義務付ける。 - 安全装置の仕様に関するガイドラインの作成
安全装置の装備が義務化されることを踏まえ、置き去り防止を支援する安全装置(仮称)の仕様に関するガイドラインを年内にとりまとめる。 - 安全管理マニュアルの作成
車側の対策である安全装置の装備との両輪として、送迎用バス運行に当たって園の現場に役に立ち、かつ、分かりやすく、簡潔な、安全管理の徹底に関するマニュアルを策定する。 - 早期のこどもの安全対策促進に向けた「こどもの安心・安全対策支援パッケージ」
(1)送迎用バスへの安全装置導入支援
(2)登園管理システムの導入支援
(3)こどもの見守りタグ(GPS)の導入支援
(4)安全管理マニュアルの動画配信や研修の実施等
(引用:こどものバス送迎・安全徹底プラン (cao.go.jp))
①の義務付けをベースとし、②安全装置の設置による対策、③安全管理マニュアルによる対策、④補助金による対策支援がまとめられています。次章よりそれぞれ解説していきます。
安全装置の義務化はいつから始まる?
安全装置の義務化は2023年4月1日からです。2022年12月に公布され、2023年4月1日より施行とされています。
安全装置の義務付け内容を簡単にまとめると以下の2つです。
① バス乗降車時に点呼などで所在を確認する
② 送迎用バスへの安全装置を装備し、①の降車時に所在を確認する
上記①の点呼を補填する資料として「こどものバス送迎・安全徹底マニュアル」が作成され、②の安全装置はどんなものを装備すればいいのかが、国土交通省策定・公表のガイドラインや内閣府HPのリストに記載されています。※それぞれ記事後半で解説します。
ソフトとハードの両輪で対策していこうというわけです。
ただし、②の送迎バスへの安全装置の装備は、施工から1年間は経過措置が設けられます。2023年1月27日の関係府省会議では次のように代替措置の例が記載されています。
<代替措置の例>
運転席に確認を促すチェックシートを備え付けるとともに、車体後方に園児等の所在確認を行ったことを記録する書面を揃えるなど、園児等が降車した後に運転手等が車内の確認を怠ることがないようにする。
「こどものバス送迎・安全徹底マニュアル」のチェックシートを用いることで、例のような代替措置対応が可能になります。
義務化の対象は?
全国の幼稚園・認定こども園・保育所・特別支援学校などが点呼および安全装置の装備義務化の対象です。約24,000施設、バス台数としては約44,000台が対象となります。
小・中学校や放課後児童クラブ(約11,000台)は降車時に点呼等による所在の確認のみ義務化対象で、安全装置の装備は義務化されていません。
※ 小学校以上の学校(文科省令の幼稚園と同じ条文)、放課後児童クラブ(厚労省令)、保育所以外の児童福祉施設(助産施設、児童遊園、児童家庭センターを除く)(厚労省令・条例)、居宅訪問型保育事業(厚労省令・条例)は、 ②は義務付けないが、()内に記載した措置により、保育所等と同様に、①を義務付ける。
(引用:「こどものバス送迎・安全徹底プラン」P6)
なお、以下の施設や事業では別途の措置を行うよう定められました。
- 地方裁量型認定こども園
- 家庭的保育事業・小規模保育事業・事業所内保育事業
- 児童発達支援事業
- 放課後等デイサービス
- 認可外保育施設
※ 地方裁量型認定こども園(告示・条例)、家庭的保育事業・小規模保育事業・事業所内保育事業(厚労省令・条例)、児童発達支援事業(厚労省令・条例)、放課後等デイサービス(厚労省令・条例)、認可外保育施設(通知)は、()内に記載した別途の措置を行う。
(引用:「こどものバス送迎・安全徹底プラン」P6)
違反した場合の罰則
安全装置の設置義務違反をした場合、その園は業停止命令の対象となります。
国交省の置き去り防止 安全装置ガイドライン
安全装置を選ぶ際の参考となるものが、「送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置のガイドライン」です。「こどものバス送迎・安全徹底プラン」を踏まえ、マニュアル運用等の対策と一体でヒューマンエラーを補完し、子どもの所在確認が確実に行われるようにする安全装置として認められる製品の要件がこのガイドラインにまとめられています。
このガイドラインに適合する製品がこども家庭庁HPで公表されています。このリストに掲載されている製品を装備することで、置き去り防止安全装置の装備義務をクリアすることになります。(送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置のリストについて)
では、どのような機能を持つ製品がガイドラインに適合する安全装置として認められるのでしょうか。
置き去り防止安全装置の補助金対象製品は2種類
ヒューマンエラーを補完し子どもの所在確認が確実に行われるようにする安全装置として認められる製品は2種類あります。それぞれに共通する要件と、各種の要件が定められています。
- 降車確認式(置き去り確認を促す)
- 自動検知式(センサーで置き去りを検知する)
この2種類のどちらか、または両方の機能を持つ併用式の製品が、ガイドラインに適合する安全装置として認められています。
共通した要件
降車時確認式、自動検知式の両方に共通する主な要件は次の4つです。
- 運転手や乗務員が確認を怠った場合は、速やかに車内へ警報を発し、15分以内に車外へ警報を発する(自動検知式の場合は15分以内にセンサーの作動を開始する)
- 警報を解除する装置は子ども達がいたずらできない位置に設置する
- 耐温性、耐震性、防水・防塵性等、十分な耐久性を有する
- 故障や電源喪失など装置が正常に動作しなくなった場合には、アラーム等で運転手や乗務員に通知する
(引用:送迎用バスの置き去り防止を支援する 安全装置のガイドラインについて (国土交通省 令和4年度 第3回車両安全対策検討会 資料6))
降車時確認式
降車時確認式は、子どもの降車後に運転手や乗務員に車内に残っている子どもがいないか確認を促す方式です。
エンジン停止後に音声やブザーによる警報が発せられ、車内の確認後に運転手や乗務員が車内後方に取り付けられた停止ボタンを操作することで警報が止まります。
一定時間警報の停止が行われなかった場合には、車外スピーカー等の警報で置き去りの可能性があること車外に知らせます。
(引用:送迎用バスの置き去り防止を支援する 安全装置のガイドラインについて (国土交通省 令和4年度 第3回車両安全対策検討会 資料6))
自動検知式
自動検知式は、センサーによって車内確認され、子どもが車内に取り残されてしまった場合は車外へ警報を発し知らせる装置です。
エンジン停止から一定時間後にセンサーによる検知が開始され、子ども(動き)を検知すると車外スピーカー等の警報や、運転手や乗務員へのメール通知で置き去りの可能性を知らせます。
注意していただきたいのは、あくまで人による車内確認をしたうえで万が一の見落としや確認漏れを補う方法であることです。決して運転手や乗務員による確認が不要になるわけではありません。
(引用:送迎用バスの置き去り防止を支援する 安全装置のガイドラインについて (国土交通省 令和4年度 第3回車両安全対策検討会 資料6))
置き去り防止安全装置ガイドラインに適合する製品
降車時確認式、自動検知式(または併用式)それぞれ、ガイドラインに適合する製品がこども家庭庁HPの送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置リストに掲載、随時追加されています。
これらは装置装備時の補助金対象となりますので、このリストから製品を選定すれば安心です。
置き去り防止安全装置にかかる補助金
置き去り防止安全装置の装備義務化にあたり、事業者の負担を減らすよう補助金が出されます。
装備が義務付けられる施設では1台あたり17万5000円、義務付けられない施設では1台あたり8万8000円の方針です。
ただし、ガイドラインへの適合が確認されていない製品では補助金が出なくなってしまいます。そのため製品を選ぶ際は送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置リストから選ぶことをオススメします。製品選びにお悩みの場合はぜひ一度ご相談ください。
施設の例 |
1台あたりの補助金額上限 |
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置き去り防止安全装置の装備が義務付けられている施設 |
・幼稚園
・認定こども園
・保育所
・特別支援学校
など
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175,000円 |
置き去り防止安全装置の装備が義務ではない施設 |
・小・中学校 ・放課後児童クラブ ・保育所以外の児童福祉施設(助産施設、児童遊園、児童家庭センターを除く) ・居宅訪問型保育事業 ・地方裁量型認定こども園 ・家庭的保育事業 ・小規模保育事業 ・事業所内保育事業 ・児童発達支援事業 ・放課後等デイサービス ・認可外保育施設 など |
88,000円 |
補助金の申請方法
補助金の申請先は自治体になります。ただし、都道府県が申請先になっている地域と、市区町村が申請先になっている地域があり、自治体ごとに申請先が異なります。オンラインで申請できる自治体が多いため、各自治体HPでご確認ください。
置き去り防止安全装置のメーカーや販売店、取り付け業者が申請を代行してくれる場合もあります。
製品および取付費用の大部分を補助金で賄える場合もありますので、ぜひ一度ご相談ください。
装置の購入・取り付け方法・業者の選び方
置き去り防止安全装置はメーカーや取扱業者、オンラインショップ等から購入できます。購入後は装置と車両の配線をつなぐ取り付け作業が発生するため、取り付けまで行ってくれる業者を検討するとよいでしょう。
装置はおおよそ制御装置・ボタン・車内外スピーカー・配線ケーブル等がセットになっており、複数の部品を車両につなぐ必要があります。
設置場所についても、
- 運転手や乗務員が席を離れて車内を確認するような工夫
- 子どもがいたずらできないような位置
- 自動検知式や併用式の場合はセンサーが車内全体を検知できるような位置や個数
に配慮する等がガイドラインで定められています。
とくに今回の置き去り防止安全装置の装備はヒューマンエラーを補完することが目的のひとつです。誤った取り付けをしたことで正しく動作しなかったり、故障に気がつかなくては元も子もありません。ケーブル等を含む電装品の取扱いに詳しい専門業者に取り付け依頼することを強くおすすめします。
まとめ
バス車内置き去り防止安全装置は、2023年4月1日から送迎バス等への装備が義務付けられました。
安全装置の装備義務には1年間の猶予が設けられていますが、安全装置選び、業者選び・依頼、設置作業、使い方確認をしたり、義務化内容①の点呼などを含めて送迎マニュアルを見直したりすると案外時間が足りないかもしれません。
また、義務化期限が近づくと、需要や設置業者への依頼が集中しさらに時間を要することが予想されます。
慌てずに正しく義務化に対応するためにも、早めに準備を始めましょう!
レスキューナウでは今回のガイドラインに適合した安全装置や信頼できる取り付け業者をご紹介します。ぜひレスキューナウへご相談ください。
<参考>
・保育所、幼稚園、認定こども園及び特別支援学校幼稚部におけるバス送迎に当たっての安全管理の徹底に関する関係府省会議 : 子ども・子育て本部 - 内閣府 (cao.go.jp)
・保育所、幼稚園、認定こども園及び特別支援学校幼稚部におけるバス送迎に当たっての安全管理の徹底に関する関係府省会議 (第5回) : 子ども・子育て本部 - 内閣府 (cao.go.jp)
・送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置のリストについて: こども家庭庁 (cfa.go.jp)
・報道発表資料:送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置のガイドラインを策定しました - 国土交通省 (mlit.go.jp)