オフィスや店舗での火災。原因や防止策は?
こんにちは。レスキューナウです。
毎年11月9日から15日まで、秋の全国火災予防運動が実施されています。
これは、災害が発生しやすい冬に入る前に、火災予防、防火対策を推進することを目的にしたものです。
今年の1月に発生した令和6年能登半島地震において、石川県輪島市が大規模な火災に見舞われたことは記憶に新しいですが、平時においても火災は身近な災害の1つであり、毎年大きな被害をもたらしています。
そこで今回は、火災(特に建物火災)の実態と、その被害を軽減するための対策についてご紹介します。
この記事の目次[非表示]
- 1.データで見る火災の実態
- 2.3つの視点から考える火災の防止策
- 2.1.火災の発生(出火)を防ぐ
- 2.1.1.高温のもの、火がついているものから目を離さない
- 2.1.2.電気機器や配線機器は正しく使用する
- 2.1.3.リチウムイオン電池(モバイルバッテリー等)の取り扱いに注意する
- 2.1.4.放火されやすい環境をつくらない
- 2.2.火が大きくなることを防ぐ
- 2.2.1.住宅用火災警報器を適切に設置する
- 2.3.消火器や消火設備の設置場所と取り扱い方法を確認する
- 2.4.火災による被害を防ぐ
- 2.4.1.職場や学校における防災訓練の取り組み
- 2.4.2.防災体験施設で火災現場を疑似体験してみる
- 3.さいごに
データで見る火災の実態
火災に関するニュースや被害の映像は普段の生活の中でも比較的よく目にしますが、その背景にはどのような実態があるのでしょうか。
本章では総務省消防庁が毎年発行している「消防白書」のデータを通して、最新の消防白書のデータを通じて、火災の発生状況や原因を見てみましょう。
冬季の火災発生件数は夏季の1.5倍
「乾燥する冬の季節は、火災に注意しましょう」とよく言われますが、実際にどれくらいの火災が発生しているのでしょうか。
令和4年(2022年)に発生した建物火災は20,167件で、ここ数年は2万件前後で推移しています。
火災の発生件数を月別で見ると、寒く乾燥した時期に件数が増加し、暑く湿った(雨の多い)時期には件数が減少していることがわかります。
出典:消防白書|消防庁
具体的な件数としては、12月〜3月の4か月間では8,205件の火災が発生しており、1日に65件以上の建物火災が発生していることになります。
6月〜9月の4か月間の出火件数5,601件と比較するとおよそ1.5倍になる計算です。
また、2022年の火災(建物火災に限らない)による死者数は7,202人であり、ここ数年は7,000人前後で推移しています。
発生件数と同様に12月〜3月の死傷者数(3,262人)と6〜9月の死傷者数(1,729人)を比較すると、2倍近い差があることがわかります。
出典:消防白書|消防庁
建物火災の2割以上を占める原因は「電気」
次に、建物火災の原因について見ていきましょう。
出典:消防白書|消防庁
1位から順に「こんろ」、「たばこ」、「電気機器」・・・と続き、出火原因の約30%をこんろ・たばこ・ストーブなど、火を使うものが占めていることがわかります。
一方で、注目したいのが電気系統の原因です。
実は建物火災の20%以上(4,217件)は電気系統(「電気機器」「配線器具」「電灯電話等の配線」「電気装置」)が原因となって発生しており、ご家庭はもちろん、PCや電気機器を常時複数接続しているオフィスなどでも注意が必要なことがわかります。
3つの視点から考える火災の防止策
では、こういった火災の発生を防ぐためにはどのようなことが出来るでしょうか。
ここからは、「火災の発生(出火)を防ぐ」、「火が大きくなることを防ぐ」、「火災による被害を防ぐ」という3つの視点で実践可能な対策をご紹介します。
火災の発生(出火)を防ぐ
高温のもの、火がついているものから目を離さない
建物火災の原因の上位になっている「こんろ」や「たばこ」、「ストーブ」などは、それ自体が高温になっていたり、炎が出ていたりするものです。
そのため、消し忘れによる火災や周囲への引火のリスクがあります。
基本的な対策にはなりますが、「使用中は目を離さない」、「その場を離れるときは完全に消す(停止させる)」、「燃えやすいものを近くに置かない」といったことを徹底することで、火災の発生を防げます。
電気機器や配線機器は正しく使用する
前述の通り、電気機器や配線等が原因となる建物火災は全体の2割以上にのぼります。
コード類を束ねて使用したり、家具の下敷きにしたまま使用したりすることなどによる、コードの発熱や被覆の損傷も火災発生の原因の一つです。
他にも、コンセントとプラグの間に溜まったほこりによる火災(トラッキング火災)も良く発生します。
電気機器は正しく使用し、配線やコンセント周りの定期的な清掃、器具の老朽化の確認を行うようにしましょう。
リチウムイオン電池(モバイルバッテリー等)の取り扱いに注意する
近年、リチウムイオン電池を使用した機器を原因とする火災が増加しており、2023年には東京消防庁管内において167件の火災(うち44件がモバイルバッテリー)が発生しました。
リチウムイオン電池の火災の恐ろしい点は、いつも通り使用しているにもかかわらず、突然発火することがある点です。
落として変形してしまっている製品や、膨張している製品を使わないことはもちろんですが、非純正品・互換製品を使用したり、熱をもった状態で長時間使用したりすることは避けましょう。
また、リチウムイオン電池を家庭ごみとして廃棄した結果、ごみ収集車やごみ焼却場で火災が発生するという事故も多数発生しています。
ホームセンター等に設置されているリサイクルBOXに持ち込むなど、リチウムイオン電池が使用されている製品は各自治体のルールに従って適切に処分してください。
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放火されやすい環境をつくらない
建物火災のうち、放火または放火の疑いのあるものは全体の1割未満ですが、それでも年間に1,500件以上発生しています。
放火されるリスクをできるだけ下げるために、家の周囲を明るくし、ごみ等の燃えやすいものを置かないようにする、物置やガレージなどは必ず施錠するなどの環境整備も重要です。
火が大きくなることを防ぐ
住宅用火災警報器を適切に設置する
消防法により、住宅の居室、階段、台所の天井などには住宅用火災警報器を設置することが義務付けられています。
火災警報器が正しく機能すると、火災を早期に発見し、初期消火や通報、避難などの行動をいち早く実施することができます。
安いものだと1台数千円で購入できますので、万が一設置していない場合は必ず設置しましょう。
詳しい設置場所は各市町村の条例により定められていますので、市町村のwebサイト等で確認するようにしてください。
なお、住宅用火災警報器は設置から10年を目安に交換することが推奨されています。
オフィス以外に従業員の方のご自宅についても、定期点検がきちんとできているか確認する機会を設けてみましょう。
消火器や消火設備の設置場所と取り扱い方法を確認する
消火器には、一般的に「消火器」と言われて想像するもの(ABC粉末消火器)の他にも、スプレー缶タイプ(エアゾール式簡易消火具)など様々な種類があります。
マンションやオフィスビルには、廊下などに消火器や防火設備が設置されていますので、事前に設置場所を確認しておき、火災発生時にすぐに使用できるようにしておきましょう。
消火器は腰の高さ程度の小さい火災の初期消火に非常に有効で、一般的な粉末消火器の放射時間は15秒程度、有効射程は5m程度です。
消火器で対応できない場合は消火栓があれば放水することができますが、天井まで届く場合は初期消火を中止して速やかに避難しましょう。
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火災による被害を防ぐ
職場や学校における防災訓練の取り組み
職場で実施される防災訓練の中で、火災を想定した訓練に参加されたことがある方も多いと思います。
その際、消火器の使用方法の他にも、非常用階段や防火戸、避難器具(避難ロープや救助袋)等の設置場所・操作方法を訓練に合わせて確認しておくと、いざという時にも安心です。
これらの防火設備は初期消火や延焼阻止、避難に有効で、防災訓練や東京消防庁が公開している動画などで使い方を知ることができますので、ぜひ身近な設備に関心をもち、使う心構えをしましょう。
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防災体験施設で火災現場を疑似体験してみる
火災が発生し、初期消火が間に合わずに火の手が迫ってきた場合には、素早く安全な場所に避難しなければなりません。
「煙を吸わないようタオル等で口を塞いで、姿勢を低くして避難する」
言葉ではその方法を聞いたことがあると思いますが、本当の火災現場で落ち着いて行動するためには、事前に体験しておくことが大切です。
手軽な体験方法の1つとしては、防災体験施設がおすすめで、吸っても影響のない訓練用の煙が充満した部屋の中で、正しい姿勢で避難する体験ができます。
最寄りの防災訓練施設を調べて、ぜひ一度足を運んでみてください。
さいごに
火災は周りのものだけではなく人の命も奪ってしまうことのある恐ろしい災害の1つですが、対策をきちんと行えば、発生や被害を最小限にすることができます。
本記事でご紹介した対策はそれぞれ目的や効果が異なるため、状況に合わせて対策を考えることが大切です。
特に、職場内での対策は一人でできることではありませんので、上司や避難訓練の担当者を上手く巻き込み、日頃から防災に取り組む環境を作るようにしましょう。