土砂災害に対する 企業の正しい備え とは?
こんにちは。レスキューナウです。
暦の上では秋に入りましたが、これから10月にかけての時期は、台風や秋雨前線の影響で、全国の広い範囲で一年のうちでも最も雨の多い期間を迎えます。この時期は大雨による土砂災害や洪水などの気象災害が発生しやすく、全国各地で毎年のように人的・物的被害が生じています。
特に土砂災害は、ひとたび発生すると大きなエネルギーをもって押し寄せるため、人命にかかわる多大な被害をもたらします。
そして、いつ起こるのか?どこで起こるのか?が予想しにくいので、事前に対策したり、早めに避難することが大切です。企業のBCPの観点からも非常に注意すべき災害です。
すでに今年(2024年)も、7月の梅雨前線の大雨による愛媛県松山市での土砂崩れや山形県・秋田県での洪水、さらに記憶に新しいところでは、8月下旬の台風10号による広い範囲での土砂崩れや浸水など各地で被害が発生しています。
今回は、こうした大雨による災害のうち、特に土砂災害に注目して、その特徴や備えるべき点などについて考えていきましょう。
この記事の目次[非表示]
- 1.10年前は広島市で大規模な土砂災害が発生
- 2.山がちな日本列島の地形と土砂災害
- 3.土砂災害の種類と前兆現象を知る
- 4.企業の対処について
- 4.0.1.<レスキューWeb>
- 4.0.2.<レスキューWeb MAP>
- 4.0.3.<ステータスChecker>
- 4.0.4.< imatome >
- 4.0.5.<アドバイザリーサービス>
- 5.おわりに
10年前は広島市で大規模な土砂災害が発生
8月に発生した最近の土砂災害としては、ちょうど10年前の2014年(平成26年)8月20日未明から明け方にかけて、広島市で発生した大規模な土砂災害があります。
広島市安佐北区と安佐南区では局地的な雨雲の発達により、8月20日01:00頃~04:00頃にかけてのわずか3時間ほどで、平年の8月1か月分を上回る200mmを超える記録的な大雨が降り、同日03:00頃から同時多発的に土砂災害が発生しました。土石流は107渓流、がけ崩れは59か所で発生し麓の住宅地に大量の土砂が押し寄せました。
避難情報(当時は「避難勧告」)が発令されたのが土砂災害の発生後であったこともあり、多くの住民が就寝中に土砂災害に巻き込まれ、死者77人(災害関連死3人を含む)、住家被害は4700棟以上にのぼる大きな被害が生じました。
2014年(平成26年)8月19日からの豪雨災害〔内閣府〕https://www.bousai.go.jp/kaigirep/houkokusho/hukkousesaku/saigaitaiou/output_html_1/pdf/201402.pdf
平成26年8月20日発生8.20土砂災害〔広島県土木部砂防課〕https://www.sabo.pref.hiroshima.lg.jp/portal/sonota/sabo/pdf/216_H26_820dosyasaigai.pdf
山がちな日本列島の地形と土砂災害
「日本列島は平地が少なく山がち、森林が多い」というイメージを漠然と持たれている方が多いかと思いますが、実際に数字で見るとどうなのでしょうか?
日本の国土面積を地形別に分けると、総面積約38万平方キロメートルに対し「山地」と「丘陵地」はあわせて約27万平方キロメートルと70%を超えます。残る30%弱が「台地」「平地」「内水域」(湖沼など)となります。
また、用途別に分けると「森林」が最も多く、約25万平方キロメートルと国土面積の約66%を占めており、その一方で、農地は約4.5万平方キロメートル(国土面積の約12%)、住宅地は約1.2万平方キロメートル(国土面積の約3%)となります。
このように見てくると、「山がちで、その山々は森林で覆われている」という私たちのイメージは数字の上でも概ね的を射ていると言えます。
こうした山がちな地形に加えて、梅雨前線・秋雨前線の停滞や台風の襲来などで夏季を中心に大量の降水があることから、斜面が削られやすく、それが住宅地に近いところで発生すると土砂災害につながっていくことになります。
土砂災害の種類と前兆現象を知る
土砂災害は主に以下の3つの種類に分けられ、それぞれの特徴と前兆現象を分かっておくと状況が悪化するかの判断に役立つことがあります。
ただし、前兆現象は必ずしも起こるとは限りませんので、あくまでも参考情報の一つと捉えてください。気象情報や避難情報、さらに雨の降り方に注意し身の安全を図ることが重要です。
※以下は内閣府「政府広報オンライン」の「土砂災害から身を守る3つのポイント あなたも危険な場所にお住まいかもしれません!」による。
「注」は筆者の加筆です。https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201106/2.html#anc03
がけ崩れ
がけ崩れの特徴
がけ崩れは雨や地震などによって斜面が急激に崩れ落ちる現状です。 大雨や長雨で地中にしみ込んだ水分が土の抵抗力を弱めることが原因です。崩れ落ちるまでの時間がごく短く、前触れがあまりないため、人家の近くでは逃げ遅れも発生し、人命を奪うことが多い災害です。
がけ崩れの前兆現象
- がけにひび割れができる
- 小石がパラパラと落ちてくる
- がけから水が湧き出る
(注)土壌の水分量が多く、普段見られないところから水が湧き出ることを示しています - 湧き水が止まる・濁る
(注)上流で既に土砂が崩れていると地下水脈が壊れ、湧き水が濁ったり止まったりします - 地鳴りがする
地すべり
地すべりの特徴
地滑りは土地・斜面の一部・全部が地下水の影響や重力によって斜面下方にゆっくり移動する現象です。土塊の移動量が大きいため、甚大な被害になりやすい災害です。
地滑りの前兆現象
- 地面がひび割れ・陥没
- がけや斜面から水が噴き出す
- 井戸や沢の水が濁る
- 地鳴り・山鳴りがする
- 樹木が傾く
- 亀裂や段差が発生
(注)亀裂や段差の変化量に注意、変化量が拡大すると大規模な地すべりにつながるおそれがある
土石流
土石流の特徴
大雨によって山の斜面が崩れ、その土砂が谷にあった土砂と水に混じって、麓へ流される現象です。流れてくるものは大小さまざまですが、トラックくらい大きな岩や、土石流が飲みこんだ大木も 20km/hから40km/hという速度で流れてくるため、一瞬のうちに人家や畑などを壊滅させてしまうこともあります。
土石流の前兆現象
- 山鳴りがする
- 急に川の水が濁り、流木が混ざり始める
- 腐った土の匂いがする
- 降雨が続くのに川の水位が下がる
(注)崩れた土砂が上流で川の流れを堰き止めていることを示唆しています - 立木が裂ける音や石がぶつかり合う音が聞こえる
(注)斜面が深く大規模に崩れていることを示唆する
企業の対処について
ここまで土砂災害のこれまでの被害や、種類などを振り返ってきましたが、では今後企業の担当者としてはどのように対処していくべきでしょうか?
必要なこととしては、下記が考えられます。
自社の事業所や工場などの所在地自治体が発行するハザードマップをしっかりと確認しておくこと
(関連記事:ハザードマップによる企業の災害対策https://www.rescuenow.co.jp/blog/column_20220715 )- 台風・大雨・土砂災害などの気象情報・警報を確認しておくこと
(関連記事:気象警報の種類や発表について https://www.rescuenow.co.jp/blog/column_20240624_keihou ) 前兆現象が確認された場合、どうするのかをルール化しておくこと
- 発生してしまった場合の安否確認や被害確認方法を周知しておくこと
とはいえ、防災担当の方が一人で全て対応するのは難しいと思います。
レスキューナウでは防災担当の方の負担が少しでも減るよう、いくつかのツールをご提供しております。
<レスキューWeb>
支社や取引先など、本社と離れた関連する地域の情報の通知を受け取りたい場合はレスキューWebをご検討ください。
電車の運行情報や電気・ガスなどのインフラ情報のほか、警報・注意報などもサイト上で確認でき、情報が発表された際にメール通知を受け取ることも可能です。
<レスキューWeb MAP>
上記の情報を自社の拠点と災害の発生場所を合わせて地図上で可視化して見たい場合はレスキューWeb MAPをおすすめします。レスキューWeb MAPでは、気象庁が発表するキキクルを元に黒色が「災害切迫」、紫色が「危険」、赤色が「警戒」、黄色が「注意」のエリアを示しており、危険度が高まっている場所を見た目で分かりやすくなるよう、上記の配色ルールに対応して表示しています。
<ステータスChecker>
災害が発生した際の事業所・取引先の被害確認や設備状況確認には、ステータスCheckerがおすすめです。
直感的な操作が可能で、被害状況や事業継続への影響範囲なども自動で集計、報告内容は深刻度に応じて自動で色分け表示されるため一目で要対応かどうかが確認できます。
< imatome >
中小企業様向けには、安否確認システム、情報収集、被害確認や設備状況確認を1つのシステムに集約した、imatomeをおすすめしています。
ダッシュボードで「平常時」「非常時」が分かりやすく、回答状況や被害状況などが一面で表示されるため、対応が必要な拠点や地域をいち早く判断でき、迅速な事業復旧や継続にお役立ていただけます。
<アドバイザリーサービス>
社内のBCPは策定されていてもいざというときに動けるか不安な方や、社内の手順やルール化にお悩みの方は、アドバイザリーサービスをご検討ください。
おわりに
土砂災害は大雨や洪水などと並んで、「起きてしまってからの対応が難しい」災害かと思います。
だからこそ、避難先や対応方法についてのルール化や気象情報・警報の情報収集など、事前の準備によって被害を最小限に抑えられるようにすることが必要です。
必要なことは分かっていても、何から手をつけていいかわからない…という方は、営業なしの「防災・BCP課題相談窓口」もご用意しておりますので、下記フォームから課題などお知らせください。
(この記事は2024年に作成されたものです)
<参考資料>
総務省統計局(2024)『第七十三回日本統計年鑑 令和6年』(電子版)https://www.stat.go.jp/data/nenkan/index1.html
国土を知る/意外と知らない日本の国土〔国土技術研究センター〕https://www.jice.or.jp/knowledge/japan/commentary07
政府広報オンライン「土砂災害から身を守る3つのポイント あなたも危険な場所にお住まいかもしれません!」〔内閣府〕https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201106/2.html#anc03
土砂災害に関する防災気象情報の活用〔気象庁〕https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/ame_chuui/ame_chuui_p8-1.html