各地でくり返し発生する「異臭騒ぎ」
■この記事の情報は、2020年6月10日現在の情報です。
この記事の目次[非表示]
こんにちは。 レスキューナウ ブログ担当です。
2020年6月4日、神奈川県三浦半島、三浦市から横須賀市にかけて「異臭がする」との通報が相次ぎました。
三浦半島で謎の異臭 騒ぎは北上…通報500件以上 (神奈川新聞・2020年6月5日)
記事によると、20時過ぎから500件以上の「ゴム臭さ」や「化学薬品の臭い」を訴える通報が相次ぎ、横須賀市では40代女性が気持ち悪さを訴え救急搬送された、とあります。 原因も不明のまま調査などを打ち切られたそうです。
さて、ブログ担当は以前にもこの手の異臭騒ぎを聞いた覚えがあります。 「災害」とは言い切れないかもしれませんが、実際に通報が相次ぎ搬送者まで出たならば、一種の「事件」と言えるかもしれません。 ちょっと気になったので、近年発生した異臭騒ぎを調べてみました。 なお、「異臭騒ぎ」とされた事件でも、特定の建物や電車内など狭い範囲で発生したものは除いています。 報道や行政発表等の確かな情報があるものを、遡る形で挙げてみます。
2019年5月8日 千葉市周辺
謎の異臭で通報120件 消防・ガス会社お手上げ 千葉 (朝日新聞・2019年5月10日)
早速、昨年2019年5月8日に発生していたものが見つかりました。記憶に新しい方も多いのでは? 神奈川で発生した異臭騒ぎのように、同じく「ゴム臭さ」を訴えるものでした。 千葉市、八千代市、印西市で通報があり、ガス会社にも通報があった模様です。 記事の見出しに「お手上げ」とあるように、原因はやはり不明でした。
2011年9月4日 兵庫県赤穂市周辺
市内各所で原因不明のガス臭 (赤穂民報・2011年9月10日)
2011年9月4日には、兵庫県赤穂市内で発生していました。 市内の広い範囲から8件の「ガス臭さ」を訴える通報があったそうです。地図で調べたところ、件数は少ないものの確かに広範囲でした。 消防が駆けつけた際には既に臭いはなく、ガス検知器も反応していなかった模様です。 原因については、記事では触れられていませんでした。
2010年5月6日 仙台市周辺
『異臭騒ぎのキーワードは「逆転層」』 (東北放送 私立TBC気象台・TBC気象台日誌2010年5月10日)
2010年5月6日の夕方から夜にかけて、仙台周辺の海岸部で「プラスチックが溶けたような」「ビニールが燃えたような」臭いでの通報が相次ぎました。 原因は不明ですが、上記リンク先のTBC気象台では「上空が暖かく地上が冷たい「逆転層」ができたことで、においが地表付近に留まりやすかった状況は指摘できます」と記述しています。 ちなみに、東北放送は気象庁の予報業務許可事業者として、独自の天気予報を発表されています。
2010年2月8日 仙台市周辺
発表内容以外の質疑応答の概要(市中心部での異臭騒ぎ、エル・ソーラ仙台の見直し) (仙台市 市長記者会見 2009年度(平成21年度)2010年2月8日)
2010年2月8日の10:00前から11:00にかけて、仙台市中心部の広範囲で異臭がしたとの通報がありました。 通報を受けて、仙台市役所の消防局・ガス局が気体を採取するなど調査にあたったそうですが、採取した気体は人体に有害なものではなく、また可燃性でもない、という結果でした。残念ながら、今回も原因は不明です。 なお仙台周辺では、異臭騒ぎが続けて発生していた模様で、記者会見中でも「今回の場合は」「今回は」と言及されていることから、くり返し発生していたとことが伺えます。
2003年2月7日 大阪府南部一帯
2003年2月7日(金) (ウェザーマップ ウェブマガジン「気象人」・気象ダイアリー2003年2月7日(金))
この件については詳細が不明なのですが、当時の新聞も検索できる範囲で参照すると、大阪府南部で異臭騒ぎが発生し、16人が現在の堺市南区にある病院に搬送された模様です。 やはり原因は不明です。
原因が判明した「異臭騒ぎ」もあった
三宅島雄山の噴火の影響による都内の二酸化硫黄濃度について (東京都・東京都災害対策本部の対応等について(第162報)2000年9月27日)
※東北大学多元物質科学研究所村松・蟹江研究室のサイトより)
2000年8月28日頃から、関東地方で、硫黄臭や卵の腐った臭いが発生していました。 しかしこの異臭は、原因がはっきり判明しました。
2000年6月26日から、東京都伊豆諸島の三宅島では火山性地震が観測され、7月8日には小規模な噴火が、8月10日には高度8000mに達する大規模な噴火が発生しました。 噴火に伴って、硫黄臭や卵の腐ったような臭いがする二酸化硫黄が上空に吹き上げられました。
そのような状況の中で、8月25日頃から、三宅島上空では南寄りの風が続きます。 噴火で吹き上げられた二酸化硫黄は、風にのって関東地方に運ばれました。 その結果、関東地方では異臭が発生したのです。
まとめ
- 異臭騒ぎは、各地でくり返し発生している
- ほとんどの場合、具体的な原因は不明
- 判明した例では、火山の噴火が原因だった
異臭騒ぎは、発生する範囲は広いものの原因は分からず、一部で搬送者があるものの重大な症状や事態にはなりません。 しかしこうして見ると、発生した災害や気象条件とも関わりがあり、いわば災害の外縁部に位置する事象といえます。
(参考文献) 2000(平成12)年6月〜噴火 (気象庁 三宅島火山防災連絡事務所)
レスキューナウ情報配信サービスはこのようなところでご利用いただいています。