大雨特別警報に新たな発表指標
■この記事の情報は、2020年8月3日現在の情報です。
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こんにちは。 レスキューナウ ブログ担当です。
梅雨の時期、今年は九州や東北など、各地で豪雨による河川の氾濫や家屋の浸水、土砂災害が相次ぎました。 今年は、と記しましたが、ブログ担当としては「今年も」といういうのが偽らざる心境です。 やはり夏の出水期になれば必ず風水害が発生してしまうのです。 東北北部を除いて梅雨明けしましたが、台風など出水期の風水害はこれからが本番です。
さて7月の大雨でも、気象庁から大雨特別警報が発表されました。 2020年7月30日12:00から、大雨特別警報が発表される条件となる発表指標が一部変更され、新たな指標による運用が開始されました。
今回は、大雨特別警報の新たな発表指標についてまとめます。
そもそも大雨特別警報とは
特別警報は、従来の警報をはるかに超える大雨などが予想され、重大な災害の起こるおそれが著しく高まっている場合に発表されます。 発表される気象現象は、大雨、防風、高潮、波浪、暴風雪、大雪の6種類です。
◆特別警報については、当ブログのこちらの記事(「あらためて「特別警報」と取るべき行動とは」)も、ぜひお読みください。
大雨特別警報は、避難勧告等に相当する気象現象をはるかに超え、避難勧告や避難指示(緊急)に相当する現象が対象です。 一定の指標に基づき、土砂災害の危険がある場合は「大雨特別警報(土砂災害)」を、浸水害又は洪水の危険がある場合は「大雨特別警報(浸水害)」が発表されます。
しかし、従来の発表条件となる雨を要因とする特別警報の指標では、条件によってはどんなに大雨が降っても特別警報が発表されない地域がありました。
伊豆大島で起きた災害
2013年10月16日、台風26号の影響で、東京都伊豆諸島の伊豆大島では、降り続く雨により、大規模な土砂災害が発生しました。 この際、伊豆大島のほぼ全域で、雨が「50年に一度の値」となりましたが、同年8月30日に開始されたばかりの大雨特別警報は発表されませんでした。
原因は、大雨特別警報の発表指標にありました。 大雨特別警報は、全国を5km四方のメッシュ(格子)に区切って、雨量の値をチェックしていました。
しかし伊豆大島の面積は91.06平方km、5km四方のメッシュということは、1メッシュの面積は25平方km。 伊豆大島は9メッシュしか存在しません。 伊豆大島は、日本の有人島で比較的面積が大きな島です。 どんなに雨が降っても、面積が小さい島では大雨特別警報が発表されない、という状況でした。 そこで、土砂災害に関する大雨特別警報の発表指標が変更されることになりました。
発表指標が変わるのは「土砂災害」
今回新たな発表指標に変更されるのは、大雨特別警報のうち土砂災害に関して発表されるもので、短時間の降水量に関する指標です。
従来、5km四方だったメッシュを1km四方に、よりこまかなメッシュでチェックし、さらに降水量(3時間降水量)や土壌に染み込んだ雨の量(土壌雨量指数)だけでなく、土砂災害や浸水害、洪水の「危険度」も活用して、「大雨特別警報(土砂災害)」が発表されるようになります。
また、危険度分布の技術に基づく指数や、全国一律の「50年に1度の値」ではなく概ね都道府県毎に基準値を設定して地域の災害特性が反映されるような発表指標となりました。
気象庁は、今回の新たな指標によって、
- 島しょ部などの狭い地域や、「50年に一度」に満たない雨量でも災害が発生する地域で、大雨特別警報の発表が可能となる
- 大雨特別警報を発表したものの多大な被害までは生じなかった現象で、発表が回避できる
としています。 実は、伊豆大島を含む伊豆諸島北部では、2019年10月11日から試験運用が開始されていました。 今回は、それを全国的に展開するものです。
特別警報を受ける側は何が変わるのか?
以上の「新たな発表指標」によって、より詳細に、かつ地域の状況に応じて大雨特別警報が発表されます。 つまり特別警報の発表が、災害が発生する実際の状況により近づいた、と言えます。
特別警報は、「警戒レベル5」に相当する情報です。 既に災害が発生した状況で、命を守るための最善の行動をとるもの、とされています。
発表指標が新しくなっても、避難行動は従来と変わりません。 特別警報が発表される前に、必ず避難行動を取られてください。 風水害は、梅雨明けしたこれからが本番です。
(参考文献)
「大雨特別警報の発表指標の改善(概要)」(気象庁)