【新潟県中越地震から20年】企業が考える大地震への備え
こんにちは。レスキューナウです。
1949年、地震観測法の改正により震度階級に震度7が設けられて以降、実際に震度7の激しい揺れを観測した回数は令和6年能登半島地震を含めると合計7回になりました。
今から20年前の2004年10月23日に発生した「新潟県中越地震」もその1つであり、初めて震度計によって震度7が計測された地震でもあります。
土砂災害による家屋の倒壊などの被害の他にも、新幹線の不通による大きな経済的影響を及ぼした地震として、今でも強く印象に残っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、新潟県中越地震の概況や特徴を振り返りながら、これからの防災・危機管理について考えていきます。
この記事の目次[非表示]
- 1.新潟県中越地震の概況
- 2.新潟県中越地震による被害の特徴
- 2.1.断続的に発生した大きな余震
- 2.2.大規模な土砂災害と交通網の寸断
- 2.3.長期的な避難生活による災害関連死
- 3.新潟県中越地震の教訓と大地震への備え
- 3.1.断続的に発生する地震への備え
- 3.2.交通網の寸断への備え
- 3.3.長期化する避難生活への備え
- 4.最後に
新潟県中越地震の概況
2004年10月23日17時56分、新潟県中越地方を震源とするマグニチュード6.8の大地震が発生し、新潟県の川口町(2010年長岡市へ編入)で震度7、小千谷市と長岡市で震度6強、魚沼市と刈羽村で震度6弱を観測したほか、東北地方から近畿地方にかけて震度1以上を記録するなど、広範囲にわたる揺れを観測しました。
震度7の観測は、1995年の阪神・淡路大震災以来9年ぶりのことでした。
新潟県中越地震の本震の震度分布図 (出典:震度データベース|気象庁)
のちに「平成16年(2004年)新潟県中越地震」と命名されたこの地震により、68人の方が亡くなり、4,805人が負傷。
その他、住家全壊が3,175棟、半壊が13,810棟、一部損壊が104,510棟と合計121,495棟、さらに非住家被害約4万棟を合わせると、約16万棟もの建物に被害が生じました。
また、停電が約30万戸、ガスの停止が約5万6000戸、断水が13万戸で発生するなど、その被害はライフラインにも及び、特にガスの復旧は11月末までかかりました。
新潟県中越地震による被害の特徴
新潟県中越地震は多くの人命と経済活動に影響を及ぼしました。
本章では、新潟県中越地震による被害の3つの特徴をわかりやすく解説します。
断続的に発生した大きな余震
新潟県中越地震の最大の特徴は、規模の大きな余震が長期間にわたって断続的に発生したことです。
震度7を計測した最初の地震の後、40分以内に震度6強の揺れが2度発生し、その後もおよそ1か月にわたり震度5弱以上の揺れが頻発。
これにより安全確認や復旧作業が遅れ、建物のさらなる倒壊や土砂災害などの二次災害にも大きな懸念が生じたことで、多くの住民が家の外での避難生活を余儀なくされました。
ピーク時には避難者が10万人を超え、公設避難所の収容能力を大幅に上回る状態となりました。
本震と1か月以内に発生した最大震度5弱以上の余震の震央分布図
(出典:震度データベース|気象庁 )
大規模な土砂災害と交通網の寸断
大規模な土砂災害が多発し、交通網が広範囲にわたって寸断された点も新潟県中越地震の特徴の1つです。
震源地である新潟県は、もともと全国的に見ても地滑りや土石流が多発する地域として知られており、震源が山間部であったことや地震発生直前の台風23号の降雨により地盤が緩んでいたことなどから土砂災害が相次いで発生。
各地で集落をつなぐ道路が寸断されたことで61の集落が孤立、241ヵ所の国道・県道で通行止めが発生し、鉄道も運休になるなど、新潟県全体の経済活動に大きな影響を及ぼしました。
また、上越新幹線では1964年の東海道新幹線開業以来初めてとなる地震による脱線が起こりましたが 、幸いにも約150人の乗客にけがはありませんでした。
長岡市村松町脱線した上越新幹線(出典:新潟県中越大震災関連情報|新潟県)
長期的な避難生活による災害関連死
余震による建物の倒壊や二次災害への不安が募る中、被災地は地震に続き19年振りとなる豪雪に見舞われ、避難所に入りきれない避難者の中には自家用車などで寝泊りをする人も目立ちました。
避難者の生活環境は次第に悪化していき、度重なる精神的ストレスや疲労から実に52人もの方が災害関連死により亡くなっています。
中でも注目されたのが、長時間同じ姿勢で座り続けることで血流が悪くなり、足の血管に血栓(血のかたまり)ができ、それが肺に詰まって呼吸困難や突然死を引き起こす「エコノミークラス症候群」です。
これにより7人が死亡したほか、高齢者の死亡が後を絶たなかったことも新潟県中越地震の特徴です。
出典:高齢者のエコノミークラス症候群の予防|LIFULL介護
新潟県中越地震の教訓と大地震への備え
新潟県中越地震は当時における防災の様々な課題が浮き彫りとなり、それは現代でも防災やBCP対策を考えるうえでの重要な教訓となっています。
本章では、新潟県中越地震から得られた教訓と各被害への対策を解説します。
断続的に発生する地震への備え
新潟県中越地震のほかにも、東日本大震災や熊本地震では震度5〜7規模の大きな余震が頻発し、復旧作業の遅れやさらなる被害の拡大が深刻な問題となりました。
企業が同様のリスクに備えるには、気象庁から発表される情報などをリアルタイムに収集し、常に自社に影響を及ぼす可能性のある事象について把握することが重要です。
さらに、安否確認ツールや拠点の状況を確認できるツールをあらかじめ準備しておくことで、実際に人的・物的な被害が生じた際に活用できるリソースを迅速に把握し、適切な対応を行うことが可能になります。
加えて、定期的な防災訓練や体制の見直しを進めることで、緊急時の対応力を高める準備が求められます。
【レスキューWeb:災害情報収集】
【安否確認サービス】
【ステータスChecker:拠点の被害確認】
【imatome:安否確認・拠点の被害確認・災害情報収集・タスク管理】
交通網の寸断への備え
新潟県中越地震では各地で土砂災害が相次ぎ、広範囲で交通網が寸断されたため、物流の停止や集落の孤立が発生しました。
企業が同様のリスクに備えるには、調達ルートの複線化によるリスク分散や代替輸送手段の確保などを進め、サプライチェーンの途絶による被害を最小限に留められるようにする必要があります 。
また、VPNやクラウドツールを活用したリモートワーク環境を整備しておくことで、交通障害による業務の滞りに対する事前の対策を打つこともできます。
改めて自社のBCPに代替輸送ルートや仮設オフィスについての記載があるかを見直し、実践的な訓練を通じて、生きた計画を策定しましょう。
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長期化する避難生活への備え
新潟県中越地震の他にも、阪神・淡路大震災や東日本大震災では、避難生活の長期化によるエコノミークラス症候群やストレスによる持病の悪化などといった健康被害が深刻な問題となりました。
企業も場合によっては災害発生時に社内に従業員をとどまらせる必要があるため、事前に食料・水・簡易トイレなど、十分な数の備蓄品を整備しておくことが重要です。
特にストレス軽減を考慮すると、パーソナルスペースを確保できるような仕切りや、できるだけ快適に寝られるように毛布を準備しておくことも求められます。
また、必要に応じてメンタルヘルスケアの相談窓口を設けたり、防災訓練にエコノミークラス症候群への予防策の周知を盛り込んだりするなど、避難生活による精神的・身体的負担を軽減するための工夫を考えましょう。
【企業向け防災備蓄相談窓口】
最後に
新潟県中越地震は日本の防災対策に大きな影響を与え、特に地域社会のレジリエンス向上や交通インフラの強靭化に寄与しました。
また、その復興活動の経験は「新潟モデル」として国内外に発信され、他地域での災害復興のお手本になっています。
現代に生きる私たちはこうした過去の大災害から学び、未来に備えることができます。
レスキューナウは設立から20年以上「危機管理×情報技術」に真摯に取り組み、多くの企業様の防災・BCPにかかわる課題解決、脱属人化・自動化をお手伝いしてまいりました。
安否確認にはじまり、社外の情報確認、拠点の状況確認、その他防災訓練支援など、様々なサービスをご提供しておりますので、お困りの際はぜひ一度お気軽にご相談ください。
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