あらためて「特別警報」と取るべき行動とは
■この記事の情報は、2020年7月9日現在の情報です。
この記事の目次[非表示]
- 1.特別警報とは
- 1.1.どのような場合に特別警報は発表されるのか?
- 1.2.地震や津波の特別警報は?
- 2.なぜ特別警報か
- 3.特別警報が発表されたら
こんにちは。 レスキューナウ ブログ担当です。
九州地方では雨が降り続き、氾濫した水が引かないなど、被害がなおも続いています。 中部地方でも、土砂崩れや集落の孤立が相次ぎました。 九州各県豪雨による災害は、激甚災害に指定される見通しですが、さらに長野、岐阜の両県で発生したものについても、激甚災害の指定が検討されています。
今回の豪雨では、長野、岐阜、福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島の各県に大雨の特別警報が発表されました。 「特別警報」というフレーズも、既に耳慣れてきたものですが、今回改めて、特別警報とは何か、そして特別警報が発表された場合は何をすべきかを考えてみます。
特別警報とは
気象庁は、大雨や洪水、風、雪、波浪、高潮などに対して、注意報や警報を地域ごとに発表しています。 特別警報は、それらの上位に位置する気象警報と位置づけられています。
整理すると、注意報<警報<特別警報という段階です。
どのような場合に特別警報は発表されるのか?
大雨、防風、高潮、波浪、暴風雪、大雪と6種類の現象に対して、警報の発表基準をはるかに超える現象に対して発表されます。
大雨の基準は「台風や集中豪雨により数十年に一度の降雨量となる大雨が予想され、若しくは、数十年に一度の強度の台風や同程度の温帯低気圧により大雨になると予想される場合」にされています。
気象庁は「特別警報は、「東日本大震災」や「伊勢湾台風」のような、誰もが一度は聞いたことがある災害に匹敵する災害が予想される場合に発表される」としています。 今回の豪雨による災害に関しても、気象庁は甚大な被害が出たとして、「令和2年7月豪雨」と既に命名しています。
気象庁「特別警報の発表基準について」(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/tokubetsu-keiho/kizyun.html)より引用。
※2022年に大雨特別警報(浸水害)や高潮警報について変更がありました。最新の防災気象情報の変更ポイントをまとめたこちらもあわせてご覧ください。
地震や津波の特別警報は?
上記の発表基準には地震や津波が入っていませんが、津波、火山噴火、地震に関しては、従来から発表が行われていた「大津波警報」、「噴火警報(居住地域)」「(緊急地震速報(震度6弱以上)」特別警報と位置づけています。
つまり、これら警報や速報は特別警報と同格と言えます。
気象庁「特別警報の発表基準について」(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/tokubetsu-keiho/kizyun.html)より引用。
なぜ特別警報か
気象庁は、「災害に対する気象庁の危機感を伝えるために、『特別警報』を創設した」としています。 これは、従来の警報を発表していても、災害発生の危険性が著しく高いことを有効に伝える手段がなく、住民の避難に結びつかず、結果として被害が増えた経緯を踏まえています。
特別警報が発表された場合、法律(気象業務法第十五条の二)に、都道府県は市町村へ通知し、市町村は住民へ周知させる措置をとらなければならない、と定められています。
つまり、特別警報が発表された場合、自治体にはそれを伝える義務が課せられています。 警報の場合は「周知させるように努めなければならない」と努力義務を課すに留めていますから、この点を見ても、特別警報が危険性が高い状態を伝える、より重要な位置づけとされていると分かります。
特別警報が発表されたら
特別警報が発表された場合にどのような行動を取るべきか、考えてみます。
大雨の特別警報は、「既に災害が発生している状況」の警戒レベル5相当
特別警報のうち、大雨に対して発表される大雨特別警報は、警戒レベル5相当に位置づけられています。 警戒レベル5相当とは、「何らかの災害がすでに発生している可能性が極めて高い状況」です。
この段階で、避難所などへの避難をしようとしても、むしろ外も危険な場合もあります。 いわゆる「垂直避難」など、屋内安全確保も検討する段階です。
「防災気象情報をもとにとるべき行動と、相当する警戒レベルについて」気象庁 防災気象情報と警戒レベルとの対応について(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/alertlevel.html)より引用。
「特別警報が発表されていない=安全」はバツ
警戒レベルを踏まえると、大雨警報は警戒レベル3相当で「地元の自治体が避難準備・高齢者等避難開始を発令する目安」、警報が発表された後、「命に危険を及ぼす土砂災害がいつ発生してもおかしくない状況となったとき」に発表される土砂災害警戒情報が警戒レベル4相当です。
つまり、特別警報が発表される前の段階で既に危険である、と言えます。 少なくとも、土砂災害警戒情報が発表された段階で、即座に避難が行える準備をしておきましょう。
「特別警報で避難すればいい」ではなく「特別警報が出たら手遅れだからその前に」という認識をぜひ持っておきたいです。
※2021年5月20日、避難情報は大幅に変更されました。災害対策基本法改正後の避難情報と防災気象情報の対応表はこちらをご覧ください。
「命を守るための最善の行動」とは
特別警報が発表された場合、発表の事実と合せて「命を守るための最善の行動を取る」という呼びかけが必ずなされます。 この「命を守るための最善の行動を取る」とは、つまるところ身の安全を確保することです。
- もし避難所まで安全な移動が可能ならば、避難所へ避難する。
- 同じく、知人宅などへ安全な移動が可能ならば、避難する。
- 外部への避難できない場合、浸水など水害ならば少しでも上ヘ避難する。
- 外部への避難できない場合、土砂崩れなど土砂災害ならば、崖の反対側の部屋などへ避難する。
(レスキューナウブログ「【災害が起きた時】「避難をする」とは?」より)
今回の豪雨で起きた、気になるニュース
今回の豪雨で、この点について気になるニュースがありました。 特別警報後もレース続行 長崎・大村ボート 観客入れた状態で (長崎新聞・2020年7月9日) 競艇開催中に特別警報が発表されたが、発表後も場内に観客を入れた状態でレースを続行していた、というものです。
一方で競艇場側は、「レースを中止して観客が外へ出るほうが危険と思われた。既に道路の冠水・通行止め等が発生し、情報収集や提供の必要や、帰路の交通機関を確保する準備もあった」としています。 令和2年7月6日の開催状況について (大村市競艇企業局・2020年7月9日)
ブログ担当は、実際に現地の状況を見ておらず、上記の報道や発表を読んだに過ぎないので是非の判断はつきません。 (「命を守るための最善の行動を取る」観点から見て、場内に留めるのは一つの選択肢です。一方、特別警報の前段階で大雨警報が発表されており、さらに早く中止する、という選択肢もあったとも言えます。くり返しますが、ここではどちらが正解かではなく、取りうる選択肢について記しています)
ブログ担当がお伝えしたい点は、最善の選択肢よりも、今回競艇場が求められた判断は、他の店舗や施設の運営者にとっても求められる判断だ、という点です。
災害発生時に、自社の利用客に対してどのような呼びかけをするべきなのか、そのための情報収集や提供手段は?
もし留まってもらうならば何を準備しておくのか?
帰宅していただくならばどのような対応をするべきなのか?
恐らく答えは一つではなく、それぞれの場所によって行うべき対応が変わりますし、また同じ場所でも災害の状況によって変わるのではないでしょうか。
まだまだ雨は続く見込みとされ、再度特別警報が発表される可能性もある状況です。 情報収集や早めの避難を、どうかお願い致します。